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弁護士ブログ

2009/03/10

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 大学時代の僕の音楽の興味に関し,ビートルズとシャンソンについて前にもこのブログで触れたけれど,やはり本籍地がクラシック音楽であったことは間違いない。クラシック音楽といっても,中学,高校時代まではショパンのピアノ曲が中心であったが,大学に入ってからは,鑑賞のレパートリーが格段に広がった。広がり過ぎて,この時代に聴いた音楽のことをしゃべり始めるときりがなくなるので,いっそのこと,この時期に熱狂したアーティストですごく印象に残っている一人のことだけを紹介したい。

 

 それは,ドイツの指揮者ヴィルヘルム・フルトヴェングラーで,この人はアーティストというより,20世紀を代表する巨匠(マエストロ)だ。僕の自宅の食器棚には,フルトヴェングラーの顔とサインが刻まれたマグカップが今も2つ大切に保管されている。確か,東芝EMIがフルトヴェングラーのレコードを購入するとこのマグカップをプレゼントするというキャンペーンか何かをやっていたと思う。のどから手が出るほど欲しかった。何で2つ獲得したかというと,1つだと割れてしまった時のことが不安で,念のためにもう1つ欲しかったからだ。

 

 フルトヴェングラーは,ハンス・フォン・ビューロー,アルトゥール・ニキシュの後,第3代目のベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の常任指揮者に就任し,ヨーロッパの人々だけでなく全世界に感動を与え続けた名指揮者,巨匠である。僕の大学時代に持っていたフルトヴェングラー指揮のレコードを何とか思い出してみる。確実に記憶しているのは,ティタニア・パラストで演奏したブラームス交響曲第1番,この盤にはベートヴェンのエグモント序曲も含まれていたと思う。あとは,ベートーヴェン交響曲第7番,この盤にはワーグナーの楽劇ニュルンベルクのマイスタージンガー第1幕への前奏曲も含まれていたと思う。あとは,ブルックナーの交響曲第4番「ロマンティック」で,これは確かオーケストラはヴィーン・フィルハーモニー管弦楽団。第2楽章では会場内で何か道具が倒れるような音まで録音されてしまっているやつだった。それから,ベートーヴェンの交響曲第9番「合唱付き」で,ルツェルン音楽祭での演奏のもの。これは1954年8月下旬の演奏で,フルトヴェングラーが亡くなる約3か月前のものである。フルトヴェングラー指揮のこの曲の極めつけは,バイロイト音楽祭でのものを挙げるファンが多いであろうが,僕はルツェルンのやつがいい。聴衆の中には「これがフルトヴェングラーの最後の第九だろう。」との切ない思いで,ハンカチで涙を拭きながら聴いていた者も多かったらしい。大学時代に聴いたフルトヴェングラー指揮のレコードはまだ他にも多数あったと思うが,今となってはあまりはっきりと思い出せない。

 

 昔も今も,フルトヴェングラー指揮の演奏が何故好きなのか,心を動かされるのかについては,やはりうまく説明できない。その指揮法は同時代のアルトゥーロ・トスカニーニのように明確でなく曖昧で,ここぞという時のあのアッチェレランド(次第に速くすること)は,スコア(総譜)に忠実にという人には相当に違和感があるだろう。でも,フルトヴェングラーの指揮が好きな理由を,敢えて,しかも抽象的にでも表現するならば,その深い精神性を感ずるところと,デモーニッシュ(悪魔的)なところであろう。

 

 フルトヴェングラーについては,その人生の一時期,ナチ協力者などといった言われなき中傷を受けたこともあったが,彼は「ヒンデミット事件」や,ベルリン・フィルハーモニー等の音楽総監督を潔く辞任したことなどからも分かるとおり,芸術や芸術家をナチの毒牙から擁護しようと必死に振る舞う,苦悩の人だったのだ(その政治音痴であるが故にナチに利用されたのだと非難する人には非難させておけばよい。)。

 

 また,「回想のフルトヴェングラー」(エリーザベト・フルトヴェングラー著,白水社)という本の中には,「『こういう作曲家がいるんだから,ピアニストの連中が実に羨ましい。』そう言ってから,皮肉っぽく,『それなのに,ショパンをぜんぜん弾かない人もいるね。あれは巨人だよ。ぼくは,ショパン礼賛だね。シューベルト,シューマン,ブラームスらの巨匠に匹敵するのは,彼をおいて他にない。』フルトヴェングラーがたいそうショパンを崇拝していたことを話すと,きまって,驚いたというような反応が返ってくるので,以上のことは特筆大書しておかねばなりません。」というくだりがある(71~72頁)。その当時ショパンをよく聴いていた僕にもこのことは全く意外だった。でも,フルトヴェングラーの配偶者が回想しているのだから間違いはない。


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