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弁護士ブログ

2022/02/10

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突然このような話題で恐縮ですが,ジェノサイドというのは,国家あるいは民族・人種集団を計画的に破壊することと定義されておりますし,ジェノサイド条約第2条によれば,国民的,民族的,人種的,宗教的な集団の全部または一部を破壊する意図をもって行われる行為のことをいいます。

 

アメリカは,現在中国の新疆ウイグル自治区で行われているウイグル族等に対する組織的な人権弾圧(本当のところは人権弾圧などといった表現も生易しいほどに極めて酷い状況)について,ジェノサイド認定をしています。2019年ころから,新疆ウイグル自治区でイスラム教徒であるウイグル人累計100万人ほどが,中国政府により「再教育施設」と呼ばれる施設に収容され,洗脳,虐待,強制不妊などが行われていると報道されました。2021年1月,アメリカのトランプ政権は,中国政府による新疆ウイグル自治区での少数民族ウイグル人の虐殺を国際条約上のジェノサイドであり,「人道に対する罪」に該当すると認定し,バイデン政権もこの決定を引き継ぐと発表しております。

 

実はね,最近,「重要証人 ウイグルの強制収容所を逃れて」(サイラグル・サウトバイ,アレクサンドラ・カヴェーリウス著,秋山勝訳,草思社)という本を読み終えたのです。サイラグルさんというカザフ人は実際にその「再教育施設」に収容され,次にもっと酷い施設に収容されるまでのごく短い期間に一旦釈放(とはいっても終日監視付き)された間隙を縫って,命からがら隣国カザフスタンへの脱出に成功し,現在は難民としてスウェーデンで家族とともに暮らしている生き証人です。

 

この本は,この生き証人の生の証言に基づいて出版されたものです。実際に収容された体験をした者でなければ供述することのできない,詳細かつ迫真性を持った証言であり,その信用性,証拠価値は極めて高いものと思われます。

 

これとは別に,中国政府は,動かぬ証拠を突き付けられた後にようやくその収容施設の存在を認めたものの,その施設はあくまでも「職業技能教育訓練センター」であると言い張っておりますが,まだ幼い人たちや80歳代後半の老婆まで職業訓練するのでしょうか。

実際にはウイグル人などがある日忽然と町から姿を消し,家族にはその行方すら知らされず,極めて劣悪な環境の下で,文化大革命の時に見られた自己批判闘争のようなことをさせられ,中国共産党の党歌を毎朝歌わされ,習近平を礼讃させられます。不十分な栄養,拷問,虐待,殺戮,性的暴行などなど,実際のところは「再教育」どころか,被収容者は死に至るか,廃人になるか,精神を病んでしまうしかありません。

 

新疆ウイグル自治区とはいっても,元々はこの地は東トルキスタンという立派な国だったのであり,チベットが受けたのと同様,中国共産党,人民解放軍によって「解放」と称した侵略がなされたのです。

 

2月4日からは北京冬季オリンピックが開催されておりますが,その国の一角で,現在進行形でジェノサイドが実際に展開されていることを思うと,果たしてこの国にオリンピック開催の資格があるのかという暗澹たる気持になります。明確な外交ボイコット,また事実上の外交ボイコットがなされてもおります。

 

「重要証人 ウイグルの強制収容所を逃れて」(サイラグル・サウトバイ,アレクサンドラ・カヴェーリウス著,秋山勝訳,草思社)という本は一読の価値は十分にありますよ。

 

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